2006/09/19(火)付 日刊建設工業新聞

経営の視点 -中堅電気設備工事- (5)


「工事・商事の両部門の連携を強化し、他社との差別化を図る」

代表取締役社長 西山勉  今月、創業88周年を迎えた西山電気。3代目社長の西山勉氏は「会社の歴史の重みを大切にしながら、当社の強みを生かした経営をしていきたい」という。電気設備工事会社では珍しく商事部門を抱え、工事部門との2部門体制で着実に業績を伸ばしている。西山社長に今後の経営方針などを聞いた。



 −業績はどうか。

 「前期の売上高は約100億円で、経常利益が約1億5000万円。売上高も経常利益も工事部門と商事部門がほぼ半分づつを占める。当社は電気工事だけでなく、商事部門を抱えているのが最大の特徴で、同業他社で商事部門を持つ会社はあまりないと思う」

 −商事部門はいつごろ設置したのか。

 「1919年に電気設備工事会社として創業したが、電気工事だけでは経営が不安定になると判断し、1940年代に商事部門を発足させた。扱う商品は当初、電気工事に関係する高圧機器やトランス、照明器具などが大半だったが、これだけでは建設市場の影響を受けやすいため、ここ10年ぐらいで商品構成を変えた。現在、FA関係や情報通信関係などが中心で、エンドユーザーとの直接ビジネスに力を入れている。FA市場が好調ということもあり、商事部門の売上高は順調に伸びている」

 −工事部門はどうか。

 「工事量は上向いているが、利益確保が厳しい状況にある。売上高の内訳は官庁2割、民間8割。民間のうち半分がゼネコンの下請工事。ビルや工場などが多く、マンション工事は少ない。長年電気工事をしているため、完成後に社員が常駐している建物も多い。常駐させると、固定費がかかり経営効率が悪いと言われるが、リニューアル工事は確実に受注できている。"顧客第一"という観点から、今後も顧客の利便性を最重要視した密着型の業務を展開するつもりだ。手持ちの工事案件は工期や予算が厳しいものが多いが、現場の社員は何とか利益を上げようと頑張っている」

 −注力している分野は。

 「5年前から管理部門を強化している。商事部門では以前から債権管理や代金回収などを徹底していたが、工事部門でもこうした未収入金の管理などを徹底させ、全社的にリスクマネジメントの徹底と財務体質の強化に努めている。毎月経営分析表を幹部社員に配布し、経営情報の共有化も進めている。出来るだけ多くの経営情報をオープンにすることで、社員が問題意識を持ち、戦略的な意思決定ができるように心がけている。これからは(企業)規模よりも(経営)内容が大切になる。経営管理を強化し、ぜい肉のない企業体質にしていきたい」

 −経営上の課題は。

 「最大の課題は人材の確保。大手企業はともかく、当社クラスの経営トップはみんな同様の悩みを抱えている。若い人が目を向けてくれる、魅力ある産業にしていくにはどうすれば良いか。業界を挙げて考えていかなければならない」

 −今後の経営方針は。

 「工事部門と商事部門をもっと連携させることで、独自の路線が拓けるのではないかと考えている。商事部門は工事部門に比べると薄利だが、営業先を多数抱え、工事を受注してくることもある。商品を販売するだけではなく、商品にソフトウエアやエンジニアリングといった付加価値を付けると、売上高、利益ともさらに伸びるはずだ」
 「工事部門は逆に、技術者にメーカーの商品知識などを身につけてもらい、提案力や交渉力、営業力に磨きをかければ"脱請負"という形の事業展開も可能になる。両部門がある時はパートナーに、ある時はライバルになって切磋琢磨することで、当社の特長が出せるはずだ。これからは他社との差別化が大きなポイントとなる。当社の歴史の重みを大切にしながら、両部門をそれぞれ育てていき、当社の強みを生かした独自の事業を展開したい」

*注: この記事は日刊建設工業新聞様から正式に転載許可をいただいて掲載しています。

このページのトップへ